はしもとの家だより

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平屋vs 2階建て?老後の家づくり、選ぶべきは「この視点」

平屋と2階建てどちらを選ぶ?老後の家づくり・住まい選びで後悔しないための視点を解説する記事サムネイル画像(バリアフリー・シニア住宅・終の棲家のヒント付き)

「段差が少ない=平屋が正解」とは限らない

老後の住まいを考えるとき、真っ先に思い浮かぶのが「やっぱり平屋が安心」という声。段差が少なく、上下移動の負担もないから——。たしかに、年齢を重ねた身体にとって物理的な負担が少ないのは魅力です。

けれど、「段差がない」という条件だけで平屋を選ぶのは、少し早計かもしれません。2階建てでも、動線がコンパクトで階段の勾配がゆるやかなら、暮らしやすい設計は可能ですし、逆に広すぎる平屋は掃除や移動が負担になることも。

大切なのは、“段差があるかどうか”ではなく、“その家をどう使うか”。平屋だから安心、2階建てだから不便、という単純な話ではありません。まずはその視点から、一度見直してみることが必要です。

将来の生活パターンを想像してみる

老後の住まいを考えるときは、今の生活スタイルではなく、「これからどう暮らすか」に目を向けることが欠かせません。

たとえば、平日はひとりで静かに過ごし、週末だけ子どもや孫が訪ねてくる。あるいは、将来的に誰かと同居するかもしれないし、通院が日課になるかもしれない。そうした未来の“あり得る日常”を思い描いていくと、必要な間取りや設備の優先順位も変わってきます。

また、今は使っていても、将来は使わなくなる部屋が出てくる可能性も。部屋があればあるほど便利なわけではなく、むしろ管理が難しくなることもあります。

家の構造ではなく、「どの場所で、どんな時間を過ごすのか」という視点で、住まいの選択肢を考えてみることが大切です。

“家全体を使いきれるか”が分かれ道

家の中に“使っていない部屋”がある。それは思っている以上に、老後の暮らしにおいてストレスになります。

たとえば2階建ての場合、いつしか階段を上がるのが億劫になり、2階が完全に物置状態になってしまうケースは少なくありません。掃除も手が届かず、気づけば“使わない空間”が増えていくのです。

一方で、平屋でも注意は必要です。収納やプライベート空間を十分に確保していないと、モノがあふれたり、気持ちの切り替えが難しくなったりすることも。

大切なのは、間取りの多さではなく、“全体を無理なく使いきれるかどうか”。空間のバランスと生活動線が、自分の暮らしにフィットしているか。使いきれない広さより、“ちょうどいい密度”が、老後の快適さを支えてくれるのです。

ライフステージで「可変」できる家を選ぶ

人生は、予想以上に変化します。今は夫婦ふたりでも、いずれどちらかがひとりになるかもしれない。逆に、子どもやパートナーと再び一緒に暮らす可能性もあるかもしれません。

そんな“変化の余白”に備えて、家も「可変性」を持たせておくことが重要です。たとえば、2階建てであっても将来的には1階だけで暮らせるようにしておく。間仕切りを外して広く使えるようにする。玄関や水回りの位置を工夫して、部分的な改修でも柔軟に対応できるようにしておく。

「いまの暮らし方」に合わせるだけでなく、「将来の変化」に寄り添える家。ライフステージに応じて暮らしの形を調整できる柔軟性が、老後の安心につながります。

「どちらが正解?」よりも、「自分に合う選択を」

平屋か、2階建てか。その選択は一見わかりやすいようで、実はとても奥深い問題です。

大切なのは、どちらかが絶対的に「正解」というわけではないこと。たとえ平屋でも、収納が足りなければ暮らしに不便が生まれるし、2階建てでも、1階だけで生活が完結できれば十分に安心して暮らせます。

私たちが選ぶべきなのは、「平屋か2階建てか」ではなく、「将来の自分がこの家に助けられるかどうか」という視点。暮らしの柔軟性、生活動線、家のサイズ感、心地よさ——そのすべてが、自分らしい暮らしにフィットしているかどうか。

どちらかを“選びきる”ことよりも、「どう暮らしたいか」に合わせて家の形を描くこと。それが、これからの家づくりの本質かもしれません。

正解はひとつじゃない。老後の家づくりは「暮らしの使い方」で選ぶ

老後の家は平屋がいい?それとも2階建てでも大丈夫?――そんな問いに、明確な「正解」はありません。

段差が少ないから、平屋が便利。収納が多いから、2階建てが安心。そうした“構造の違い”よりも大切なのは、「その家で、どう暮らしていきたいか」という視点です。

将来の生活リズム、健康状態、家族構成の変化。そうした可能性のすべてに柔軟に対応できるように、「家の全体を使いきれるか」「変化に合わせて暮らし方を変えられるか」を見つめることが、もっとも重要な視点となります。

老後の住まいは、“今の自分”ではなく、“未来の自分”を支える場所。だからこそ、構造ではなく「使い方」に目を向けて、自分にとって本当に心地よい家のかたちを、じっくり考えてみませんか?

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